真結ブランドとして、私たちが地域のお手伝いをできること
地域の課題とその取り組み
2014年の夏、日本の地方に衝撃を走らせた本が出版された。増田寛也氏著の「地方消滅」という書籍である。896の市町村が消滅の可能性があるという衝撃的なもので、私たちが暮らす兵庫県内にも当リストに該当する市町村名がいくつも挙がった。
実はこの増田さんの著書が出版される1年前の2013年に大社充氏が「地域プラットフォームによる観光まちづくり」という興味深い本を出版した。地域に受け皿を整備し、魅力ある観光まちづくりを実施するという内容で、その成功事例とされた南信州観光公社設立の物語である。当時この本を読んで、これからの日本が直面する課題へのヒントがここにあると南信州観光公社を訪ねた事を今でも鮮明に覚えている。
ちょうどこのころ、私たちはある方と運命的な出会いをする。それは神崎郡神河町長の山名宗悟さんとの出会いである。エネルギッシュな山名町長が平身低頭な姿勢で当社を訪ねてこられた。目的は「神河町を地元の力で一緒に盛り上げてほしい」とういう内容であった。
早速私たちは神河町に足を運び、現地を視察する事になった。町長の山名宗悟さんに丁寧に説明を受け、神河町の大自然に触れ、また地域の人々との交流も始まる。
山名宗悟さんとの親交をきっかけに、何度も神河町に足を運んだ。2014年の増田氏の著書の影響を受け、当時地方創生大臣であった石破茂氏のもと、日本の各地域は「地方創生」の大合唱となる。地方創生委員会、また地域の移住・定住促進。地域の魅力を伝える地域おこし協力隊の方などもこの時期に誕生した。神河町の砥峰高原は映画のロケ地としても有名で、なかでも秋口のすすきが野を金色に染める頃は多くの観光客が訪れた。反面、冬季などの閑散期は観光客もまばらで、冬季の観光対策などが当時の喫緊の課題であった。地域の方と色々知恵を絞り、2015年にかまくら風のテントを設け、雪景色を愉しむ「神河町が贈る極上の冬時間」という企画を提案させていただいた。この「神河町が贈る極上の冬時間」の継続的な取り組みとして、神河町には2017年に日本国内にとっては実に14年ぶりにスキー場が誕生した。
(写真は神河町の魅力を調査し、海外の方を招待してサイクリングを快適に楽しめる企画を実施した時の様子)
実現しない夢はないという実感とその先にあるもの
神河町長の山名宗悟さんとの出会い、何度も現地に足を運び、地域の方に話を伺い、交流を拡げる。そして何もなかった神河町の山にスキー場が誕生する。地域創生は困難の連続であったが、そのプロジェクトに携わる人に熱い想いがあれば「実現しないことはない」とう実感をもった。その一方で地域振興は打ち上げ花火のように瞬間的に取り組みのではなく、継続的な活動を行わないと地域は荒廃することも体感した。そして何よりも強く感じたことはまだまだ人びとが気づいていない地域の魅力的な資源。真の地域の魅力はまだまだ域外の人に伝わっていないことを痛感した。
地域活性化の活動に悪戦苦闘する日々、アイデアを探す私たちが新聞記事で度々目にする方がいた。それが有馬温泉・御所坊の当主金井啓修(ひろのぶ)さんである。金井さんは観光カリスマとして日本でも注目される方だ。金井啓修さんとの出会いも運命めいたもので、有馬温泉の活性化で意気投合し、当社は姫路駅発の有馬温泉の路線バスを運行する事にも繋がった。
(姫路と有馬温泉を結ぶ新路線の開業式の様子。有馬温泉観光協会会長の金井さんとの連携により実現)
これから必要とされる地域観光という課題へのチャレンジ
人口減少の流れを受け、日本のあらゆるサービスが高級化路線をとり、格安もしくは高級の2局化状態がこの頃より加速する。当社も2016年に「真結(ゆい)」というツアーブランドを立ち上げ、バスの開発を1年がかりで実施した。デザイン・監修は工業デザイナーの水戸岡鋭治氏である。水戸岡氏のデザインは鉄道・船など幅広く、人気のデザイナーである。デザインはさることながら当社の代表である長尾が何よりもこだわったのは「これまでにない面白いバス開発や徹底的にこだわったバスツアーを実行する」という事であった。地方創生で体感した地域のほんものの魅力発掘、これらに光を当て再発見を行う「日本再発見」の旅。このキーワードをもとにバスツアーを拡充させていきたい相談を金井さんにお願いした。
(写真は2016年 真結ツアーブランド発表会の様子)
柏井壽氏との出会い
2017年、金井さんの紹介で私たちはふたたび運命的な出会いをする。京都在住の作家、柏井壽さんとの出会いだ。柏井さんは「鴨川食堂」という著書はもちろん、年間250泊ほどはホテルや旅館で過ごすまさに旅通・食通であった。日本の隅々を自らの足で訪問し、贅沢や豪華ではない、それぞれの価値や価格に見合う体験を重視された筋の通った方である。私たちのバス旅行の取り組み、そしてこれから日本再発見をしていくという考え、加えて地域の魅力をもっと深堀りし伝えていきたい思いを語った。柏井壽さんと意気投合し、2つ返事で「日本再発見」のバスツアー開発に協力いただくことになった。
(写真は柏井壽さんに私たちの夢を語りに京都に伺ったときの様子。忘れらない夜となった)
こだわりの宿グループ、日本味の宿との出会い
日本味の宿は特に地域の食にこだわりをもつ約34の旅館等が構成するグループで、その旅館のほとんどが歴史ある地域の老舗旅館である。なかには18代目の当主などその歴史も地域での役割もゆうに100年を超える宿も在籍している。また柏井壽さんに紹介いただいた宿などは500年を超える歴史ある宿もあった。私たちはこの2017年から2019年の2年間でその宿を訪ね歩き、主人・女将との親交を深めた。
(写真はツアーで訪れた山代温泉の老舗旅館、あらや滔々庵の18代目当主。柏井壽さんとともに訪ね、私たちにしかできないこだわりのツアーを当主とともに実施)
地域にやどる「美意識」を伝える
観光はその言葉どおり「光を観る」である。つまり地域を訪ねその「ほんんものの良さ」を発見する。一方、大量販売・大量集客が生み出したオートマチックなシステム、主人の見えない宿やホテル、てんこ盛りの観光コースなど、訪ねた地域の方の話の本質を聞く前に次の観光地を訪ねるなどが観光のスタイルとなってしまい、「光を観る」という、この光が「ほんもの」か「一流か」などは関心がないツアーが大半である。柏井壽さんもご自身の著書で書かれているが、朝、店の前を歩き、昼も訪ねそして夜にも訪ねる。つまり現地滞在は「点」ではなく「面」であり、時間の移ろいともに見えないものが見えてくる、そして移ろう時間の中で、五感を研ぎ澄まし本物かそうでないかの区別がつくと教えていただいた。
車で走っていると見えないものが、歩いていると発見する、まさにこの感覚と同じで、朝から夜まで歩き、その地(宿)に泊まりその良しあしを判断していく。この地域にやどる「美意識」を自身の中にどう持つかという事が大切だと体感した。
(写真は陰翳礼賛の宿として知られる佐賀唐津の老舗旅館、洋々閣の玄関。美意識の高い宿として日本のみならず海外のファンも多い)
百戦錬磨のお客様
私たちが手掛ける「真結」ツアーはバスツアーであるが、その価格帯は日本でもトップクラスの高価格帯である。日帰りバス旅行が一人あたり3万円から5万円である。私たちが大阪で販売したバスツアーでは日帰りが一人8万円という商品もあった。このクラスのお客様は言うまでもなく百戦錬磨のお客様である。私たち企画者も「価格以上の満足感」を提供する義務がある。現地を下見し、コースを練り上げ、ツアーパートナーの地域の方や旅館の主人などと一生懸命お客様に向き合い、もてなした。この繰り返しが、のちにリピーターのお客様に繋がり、真結ツアーは多くのリピーターファンを生み出す事ができた。
(写真は音戸の瀬戸で平清盛の歌でツアー客を歓迎する地域の方。私たちの想いと地域文化を伝えたい現地の方の想いを実現させようと、特別に実施し記憶に残るツアーとなった)
真結を通じて地域貢献できること
「真結(ゆい)」というツアーブランドはその名の通り、真(まこと)を結(むすぶ)である。地域とお客様を結ぶ、心と心を結ぶ、地域と地域を結ぶなど、真(ほんもの)を紹介し、お客様を現地にお連れして、時には厳しいお叱りも受けながら取り組んできた。関西で約5000名の知的好奇心旺盛のお客様をお連れし、そのツアーコースも1000本を超えている。これまで培ってきたノウハウをもっと地域に活かすことはできないだろうか、バスツアーだけではない「真結」の魅力で地域を紹介したいと考えるようになった。
真結スタイルという新しい地域発見のかたち
2020年4月、真結スタイルという形で、地域の魅力を発掘し伝えていくという活動を、WEBサイトなどを通じて本格的に開始した。2013年に訪ねた信州南観光公社にはじまり、地域の様々な場面を見てきた経験、そして美意識の高い人びとの出会い。その価値を評価する百戦錬磨のお客様。これから私たち真結チームが何を伝え、どう活動していくか、地域の再発見は簡単ではない。くわえて地域の発掘した魅力を「伝える」ことも非常に難しい。価格が高いほどそれに見合うストーリーも求められる。その一方で積み上げた経験値を活かすことも私たち真結チームの強みである。チャレンジは始まったばかりだが、地域の取り組みのヒントは以下にあると考えている。
(神河町の砥峰高原の見頃の時期。神河町の山名宗悟さんと)
地域の魅力を発掘し、編集する人(聞き出す力と伝える力について)
現在、インターネットには多くの情報が溢れる。現地の写真や口コミなど、本物か偽物かの区別も変わらないほど複雑化している。このような中、地域の情報を整理し物語を紐解いていく質問力が高いライター、現地を調査・取材するとき、「質問力」と「編集力」は大変重要である。現地調査をするときは私自身も記事を書いて、何度も修正して編集する取り組みを実施してきた。自身の経験値と美意識をもとにライターと一連托生する。
インタビューの録音源を何度も聞き返し、その言葉、空気の裏側を発見していく。つまり「美」がどこにやどっているかを見極めていく。ライター次第で地域情報は大きく変わる。私たち真結チームはともに活動するライターにこだわった。
(自然栽培農法になぜ取り組んだか、その背景をじっくり時間をかけて聞き出し、まとめる)
地域の魅力をどう表現するか(写真や動画について)
私たち真結チームは、ツアーを通じ数多くの現地調査を行ってきた。私自身も一眼レフを持ち3万枚以上の写真を撮っただろうか。最初は下手だった写真撮影も1万枚を超えたあたりから感覚をつかみ始め、2万、3万とシャッター音とともに、切り取った写真画像を見て「ストーリー」が表現できているかどうか理解できるようになった。写真撮影については所詮素人。技術的な事はわからないが、その切り取った写真のストーリーはプロの写真家にも負けないと自負をして今でも現地調査を行う。
一方で、地域の魅力を表現するのに一番と感じる事は現地在住のプロのカメラマンを探し、そのカメラマンに託すことである。その地に住んでいるカメラマンはその地の事を誰よりもよく知っている。私が現地を訪ねる時間は時計の針でいうと1時間刻みの景色しか見ていないようなものだが、現地に住んでいるカメラマンはその一瞬一瞬、つまり秒単位の風景を知っている。私たち真結チームは現地調査、インタビュー、お客様に伝える表現やツアーコースなどを企画し、現地のプロのカメラマンに風景の切り出しを託す。真の地域連携がないと物語は伝わらないと考えているからである。
(現地カメラマンだからこそその時間帯の一瞬をカメラにおさめることができる。一枚の写真へのこだわりも真結ブランドならでは)
私たち真結がお手伝いできること
増田寛也さんの著書から6年。観光立国日本として近年、多くのインバウンド客で観光地は賑わいをみせたものの、コロナ禍によって観光産業は多大なるダメージを受けた。一方で幾度となく苦難を乗り越えてきた地域の老舗企業。あるいは繰り返す大きな自然災害を受けても、今もなお残ってきた日本の原風景。そして何よりもその地で暮らす人や地域を愛する人たち。地域と人を結ぶ「真結」の活動を通じ、培ったノウハウで地域を再発見し、知的好奇心旺盛な方に情報を伝え、地域を訪ねていただく。コロナ禍でも変わる事のない私たちのこだわり、地域のこだわりを一緒に伝えていきたい。
(写真は京都の陶芸家、片山雅美先生のご自宅兼窯を訪ねて。地域の方をお客様を結ぶことも私たちの使命)
具体的なご相談
現地を訪問し、調査、インタビュー、編集、記事掲載、写真撮影、情報発信、ツアー化などを含めお受けしております。
お受けする費用は地域や内容によって変わりますが、まずはお気軽にご相談ください。
問い合わせ先電話078-806-8023
神姫バス真結ブランド推進課
担当:岡田