但馬のきらりと光る魅力を探して、城崎・湯村温泉・竹田城へ
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兵庫県の北部に位置する但馬エリア。日本海に面した、開湯1300年の歴史を持つ城崎温泉は、温泉街の真ん中を流れる⼤谿川沿いに柳並木が続き、7つある外湯を巡りながらぶらぶらとそぞろ歩くのが楽しい、情緒溢れる街です。春の桜、秋の紅葉など、季節を通じて味わい深い楽しみがありますが、最もハイシーズンは冬。言わずと知れたカニの産地として有名です。旅館やレストランでカニ料理を存分に楽しむのはもちろん、街に出ればカニをモチーフにした可愛いお菓子や、カニに合うビールなど、ユニークなお土産も見つかります。
■ 店舗名:城崎温泉みなとや
■ 商品名:かに最中(かにもなか)
■ 所在地:〒669-6101 兵庫県豊岡市城崎町湯島416
■ お問合せ:0796-32-2014
■ ホームページ:http://www.kinosaki-miyage.com/温泉を訪ねる前に、ここをチェック!城崎で温泉に入るなら、まず温泉寺を参拝するのが本来の習わし
宝箱のようなこの街を、古くから見守っているお寺があることはご存知でしょうか?その名も「温泉寺」。この温泉寺と城崎には大変深い関わりがあります。城崎温泉の歴史を辿ると、不思議な逸話がありました。奈良時代初期の養老元年(717年)、この地を訪れた僧侶の道智上人は、難病に苦しむ人々を目の当たりにし、彼らを救うために千日間の修行を行うと、その功徳によって湯が湧きだしたと伝えられています。温泉寺はその道智上人が、この地に永く温泉が栄えることを願って、738年に開創されたといわれます。まさに城崎温泉の守護寺なのです。
温泉寺は城崎の街を上から広く見下ろすような大師山の中腹にあり、ロープウェイに乗って自然の風景を眺めながら訪ねるのが楽しいでしょう。温泉寺駅を降りるとすぐ、古めかしい建物が目の前に現れます。
本堂はおよそ600年前に建てられた、国の重要文化財。城崎の街は、大正14(1925)年の北但大震災で多くの家屋が倒壊し、火災による壊滅的な焼け野原となりましたが、山の上にあったこの寺は奇跡的に無傷だったそうです。おかげで貴重な仏像や仁王像、襖絵などが現存しています。特に2mを超える、大きくどっしりと力強い本尊十一面観音立像は、桧の一木彫の鉈彫りで、33年毎のご開帳時にしか拝見することのできない大変貴重な仏様です。また、弘法大師空海作と伝えられる千手観音像は、834臂ものお手が彫られた大変珍しい木像で、制作された当時は本当に千本あったとか。実際に観音様を目の前にすると、その精巧さと迫力に圧倒されます。どちらも国指定重要文化財です。
「古来より、城崎で温泉に入るなら、まずはこの山の上のお寺を訪ねてお参りすることが、本来の慣わしでした」と生まれも育ちも城崎だという、住職の小川祐章さんは語ります。難病を救い、開湯に携わった道智上人に感謝の意を表し、「古式入湯作法」という入浴の仕方を習ってから湯に浸かることが、正しい作法だといいます。
「参拝した方は、その証として湯杓を授かります。湯杓は観音様のお手であると見立て、尊い湯を湯杓で丁寧に扱い、ありがたく浴びさせていただく、という心得から生まれた作法でした。昔は皆、湯杓を使って念仏を唱えながら湯を浴びていたのです。私は子供の頃から温泉に入っていますが、以前は立っても大人の胸くらいまで浸かる深い浴槽でしたので、10分も入ると熱くなってしまいます。そこで浴室に敷かれたすのこの上に横になり、手ぬぐいを体にかけ、湯杓で時々湯をすくっては体に浴びせていると、まるでミストサウナのように湯気に包まれてホカホカと芯から温まりました。湯杓の湯を少しずつ浴びながら浴室でのんびり過ごすことが、温泉のエネルギーを最大限にいただける、理に適ったちょうど良い入浴方法だと実感しています」温泉への感謝と祈りの気持ちは、きっと効能にも影響を与えているはず、と小川さんは続けます。
「ここは人の病気や怪我を癒す湯治場であると同時に、寺と一体になった信仰の場でもありました。人々は自然の恵みであり、神仏のご加護である温泉に日々感謝しながら入り、暮らしを営んでいました。大変日本人らしい精神の在り様がこの街にはあります。それが城崎温泉の最大の魅力ではないかと思います」
■ 施設名:城崎温泉 温泉寺
■ 所在地:〒669-6101 兵庫県豊岡市城崎町湯島985−2
■ お問合せ:0796-32-2669
■ ホームページ:http://www.kinosaki-onsenji.jp/豊富な湯量が魅力。温泉が人々の暮らしに深く根付く街、湯村温泉
城崎温泉から、さらに車で約一時間、鳥取との県境にも近い秘境ともいえる山間部に名湯、湯村温泉があります。嘉祥元年(848年)に慈覚大師によって発見されたといわれる、こちらも古い温泉です。ここの最大の特長は日本屈指の高熱温泉で、なんと98℃。しかも洗浄効果と保湿効果に優れた泉質だそうで、肌に良いといわれる美人の湯。湯量も豊富なため、旅館はもちろん、温泉街にある各家庭にも配湯されています。家には水道と温泉の2つ蛇口があることは普通で、ひねればいつでも温泉が出てくるというなんとも贅沢なシステム。この街の人々に湯沸かし器は必要ありません。「荒湯」と呼ばれる元湯の湯壷ではボコボコと熱湯の自噴する様子が見られ、いつももうもうと湯気が立ち上っています。これは開湯以来、ずっと変わらず湧き続けているそうです。
湯村温泉は昔から住人の生活と密着しており、荒湯はいわば街の台所。山菜やタケノコを湯がいている人がいるかと思えば、お酒や缶コーヒーを温めている人まで。代々受け継がれた専用のかごに野菜を入れて湯の中に吊るし、お正月には黒豆の入った大きなやかんがぶら下がっていることも。地元の人々ののどかな暮らしの風景を垣間見ることができます。湯は無味無臭で料理にも適しており、重曹を含む成分のおかげで野菜はアクが抜け、色鮮やかに茹るそう。湯がいた豆腐はとろりとまろやかな味わいで、この地域の旅館の名物料理にもなっています。観光客も卵を湯がく体験ができるので、ぜひ挑戦してみましょう。温泉で温めた卵は、張りのあるぷるぷるの食感で黄身が濃く、とても美味しいです。
■ 体験名:荒湯&足湯
■ 所在地:〒669-6821 兵庫県美方郡新温泉町湯
■ 営業時間:24時間(足湯ご利用時間 7:00頃 ~ 21:00頃)
■ 定休日:無
■ 体験値段:生卵 3個入り150円~
■ ホームページ:http://www.yumura.gr.jp/「佳泉郷 井づつや」は江戸時代初期よりこの地に開業した、老舗温泉旅館です。趣の異なる優雅で多彩な大浴場は、ここの大きな特長の1つ。地下にはダイナミックな野趣溢れる大岩大浴場、日本庭園の露天風呂、檜風呂、そして最上階には街を見渡せる展望檜風呂など、様々なタイプの浴場が楽しめます。温泉熱を使った岩盤浴もあります。自家源泉なので湯量が豊富で常に新鮮。体の芯からポカポカ温まり、風呂上がりは冬でもTシャツ一枚で外に出られてしまうほど。雪深い地域ですが、雪を溶かすにも温泉の湯が活用されているそうです。
井づつやの代表、丸上宗慈さんは言います。
「ここの住所は兵庫県美方郡新温泉町で字名が湯。まさに温泉の街ですね。当館では、バイナリー発電という温泉熱を電気に変換する仕組みをいち早く取り入れており、冷暖房は全てそれで賄っています。私が物心ついた頃には既にそうでしたので、かなり昔から環境に配慮したエネルギーを当たり前のように利用していました。これからの脱炭素社会においても、注目される温泉地ではないでしょうか」
そしてこの旅館の魅力は温泉だけではありません。但馬牛や蟹をはじめとする、地域の食材を存分に生かした旬の料理を堪能できます。館内には個室の料亭からカジュアルな雰囲気の居酒屋まで様々なタイプの食事処があり、その時の気分で選ぶ楽しみがあります。料理長の井上明彦さんは、現代の名工として表彰され、日本料理を世に広めるべく、新しい技術の開発や後継者育成等に尽力されている屈指の料理人。かつての有名料理番組「料理の鉄人」に出演したこともあるとか。調理師専門学校で講師も務めるなど、幅広く活動されています。
■ 施設名:佳泉郷 井づつや
■ 所在地:〒669-6821 兵庫県美方郡新温泉町湯1535
■ お問合せ:0796-92-1111
■ ホームページ:https://www.izutuya.com/さて、湯村温泉の街を散策していると、小道の外れに一風変わった雰囲気の店を発見しました。「遊月亭 おばあかふぇ」は、母体である菓子店を定年退職したOBたちが元気に働いています。平均年齢は71歳。築130年の古い日本家屋を改装し、佇まいはカフェのようではありますが、なぜか入り口に顔ハメがあったり、不思議なカレンダーが売っていたり。入ってくる要素があまりに多過ぎて、ここを何と説明したら良いのやら、うまい言葉が見つかりません。
店内の壁にはユーモアたっぷりの“おばあ語録”の書かれた色紙がびっしり。「人生ピークは90歳!!」など、どれもクスッと笑ってしまうような、それでいて元気になれそうな、愉快な言葉の数々です。おばあたちを取りまとめているという、通称“ばば虎さん”(実は遊月亭の社長さん)に話を聞いてみると
「この地域の冬は長く雪深く、保存食文化が発達しています。それを後世に残し、若い人に伝承していこう、という目的から、この店を始めました。でも気づいたら、おばあたちのペースに巻き込まれて、こんな自由気ままな雰囲気の店になっちゃったんですよ」と大笑い。
個性もバラバラ、お茶目でチャーミングなおばあたち。明るくおおらかで、ちょっと気まぐれでユーモラスなおばあたちに会って、一緒に話をしてみると、なんだかほっと癒される、悩みやストレスが吹き飛んで元気をもらえると、来る人はみんな大喜びなんだそうです。今では希少になってしまった栃の実を使ったコーヒーや栃餅、おばあがその場で焼いてくれる根性焼き、手作りおはぎなど、ほっこり温かいメニューも色々。「おばあのこうじゃあげ漬け」(スルメイカの糀漬)という、地域の郷土食もちゃんとあります。笑いの絶えない素敵なおばあたちに会いに、ぜひ扉を開けてみてください。
■ 店舗名:遊月亭 おばあかふぇ
■ 所在地:〒669-6821 兵庫県美方郡新温泉町湯82−1
■ 営業時間:10:00~17:00
■ 定休日:第2・第4 火曜日
■ お問合せ:0796-85-8010
■ ホームページ:https://www.yuzukitei.com/obacafe竹田城を一層深く味わうために、竹田の街を訪ねる
「天空の城」、「日本のマチュピチュ」などと言われ、雲海に浮かび上がるドラマティックな絶景が多くの人を魅了する竹田城跡。標高353.7mの古城山山頂に築かれた山城で、虎が伏せているようにも見えることから、別名「虎臥城(とらふすじょう、こがじょう)」などとも呼ばれます。竹田城へのアクセスは、JR竹田駅から、竹田城登城の入り口である観光案内所「山城の郷」までシャトルバス「天空バス」が走っており、京阪神からは竹田城行きの高速バスもあります。深い霧に包まれる幻想的な風景を見たいなら、秋のよく晴れた早朝がベスト。前日から竹田の街に泊まり、竹田城とゆかりの深い城下町を散策してみるのはいかがでしょうか。
JR竹田駅の駅舎を振り返ると、遥か彼方の山の上に竹田城の城壁が小さく見え、ついに来たな、と気分が高揚します。竹田駅に止まるのはたった一両編成の小さな赤い電車で、コトコト走る様子はまるで絵本の世界のような可愛らしさ。お城の上からこの駅舎と走る電車を眺めると、まるでミニチュアのようです。竹田駅は単線なのに引き込み線があり、なぜかホームは3つ。その理由は、かつて竹田に但馬牛の大きな市場があり、当時は買い付けた牛を列車で貨物輸送していたのだそうです。
踏切を渡った線路の反対側に伸びる寺町通りは、立派な松並木の道に沿って小川が流れ、のんびりと鯉の泳ぐ情緒ある通りです。小川にかかる石橋はどれも江戸時代のもので、最も古いものは1707年の刻印が。ここはかつての武家屋敷であり、竹田城の歴代城主の菩提寺が4軒建ち並んでいます。殿様や武士たちは普段はこの辺りに住居を構えて暮らし、戦が起こると狼煙を合図に山の城に籠って戦う、という生活だったそうです。
「城下町に住む人は、お城と共に生きてきた、という誇りと愛情があります。住民たちはお殿様を尊敬し、戦になればみんなで一緒に戦いました。普段から人々はお城を守り、守られているという意識と連体感がありました」と話すのは、朝来市の観光交流課で街のガイドを務める上山哲生さん。竹田城が廃城になる前の最後の城主を務めた赤松広秀(斎村政広)は、「仁政の主君」として領民から慕われていたそうです。竹田城に今も残る石垣遺構は赤松が整備したといわれ、養蚕業や漆器産業を奨励し、竹田の現在の地場産業である家具製造業の礎にもなったと伝えられています。
「江戸時代になると、竹田城の廃城によって城下町は宿場町へと変貌を遂げます。いろんな商売をする人が出入りし、人が多く集まるようになりました。明治、大正、昭和の初期はこの辺りはお店ばかりだったんです。元は城下町なので、敵が動きづらいようT字路になっていることも特徴的です」
旧街道には古い商家の街並みが今も残っており、切妻屋根に本うだつ、虫籠窓など、伝統的な建造物を多く見ることができます。古い建物を上手くリノベーションして飲食店やホテルなどに活用し、街を元気にする動きもあります。
約400年の歴史を持つ旧木村酒造場に、「竹田城 城下町ホテル EN」があります。この建物は街の象徴的なシンボルとして、地元の人々に古くから愛されていました。明治35年頃に建造された趣ある建物を、できるだけそのままに残す形でリノベーションしています。建物の一角には、古い竃(かまど)や酒米を蒸す甑(こしき)の跡がそのまま残っていました。もともと酒蔵の発酵蔵だった部分はレストランとして再生。客室は母屋の他、街中に点在する古民家を活用しています。街に暮らすように泊まることがこのホテルのコンセプトであり、家族や友人同士で気兼ねなく寛げる一棟貸しや、ペットと一緒に泊まれる客室もあります。
「ホテルの仕事をきっかけに移住してきましたが、この辺りは水も空気も綺麗で、野菜の美味しさには本当に驚きました。素材ひとつひとつが生き生きとしているんです」と話す、EN支配人の紺野果奈さん。歴史の息づく蔵の中で、新鮮な地元の食材をふんだんに使った料理を提供するレストランは、ENの自慢の1つです。
「昔ながらの街並みにも味わいがあります。雨の日は石畳の濡れた様子に風情があり、夜は橙色の明かりが灯って、その温かみのある雰囲気も美しいです。散策するのが楽しい街ですよ」
古き良き竹田の街並みをじっくり味わうことで、竹田城への旅の記憶は一層深まるのではないでしょうか。
■ 施設名:竹田城 城下町ホテル EN
■ 所在地:〒669-5252 兵庫県朝来市和田山町竹田
字上町西側363番
■ お問合せ:0120-210-289
■ ホームページ:https://www.takedacastle.jp/高速バスの特等席!全但バスに「GREEN ROOM(グリーンルーム)」が誕生
快適なバスの旅を楽しめるよう、ゆったりとした座席やパウダールームの充実、充電コンセント等を備えた、全但バスこだわりの車両「LuxRea(ラグリア)」。同車両に特別なプライベート個室「GREEN ROOM」が誕生しました。ラグリアよりさらに10cm広げたゆったりシートは、さながらバスのグリーン席。プラス1000円でこのリラックス環境を満喫できます。また、GREEN ROOMには、日本初の「バスビュー」を設置。これは全但バスのお膝元でもある豊岡の芸術文化観光専門職大学の学生たちと一緒に考案した、全く新しいシステムです。バスは車高が高く、自動車とは違った目線から見える風景が、乗車の醍醐味ではないか、という学生たちの発想がきっかけとなりました。車体の前方、天井、後方、運転席の4ヶ所にカメラを設置。それぞれの景色を個室のモニタースクリーンで鑑賞することができます。バスに乗りながら、大空を飛ぶ鳥や、車高ギリギリにトンネルに入る様子など、普段なかなか見ることのできないユニークな目線の映像を楽しむことができるのです。
さらにもう1つの特徴として、KDDIと連携したスマートグラス「NrealLight」を導入。特殊なメガネをかけることで、数メートル先にまるで100インチの画面があるような、臨場感のある映像を視聴できます。オリジナル観光動画の他、自身のスマートフォンと連動して動画アプリなども利用可能。これらは高速バスの城崎−大阪線、湯村温泉−大阪線で実施されます。