旅と健康の深いかかわり~健康とはなにか
旅と健康
GO TOトラベルというキャンペーンを打ち出さなければならないほど、ひとが旅をしなくなったのは、コロナ禍のせいで、旅が健康を損なう機会になるかもしれないと思うようになったからです。
長く旅を愉しみ続けてきたぼくには、大きな驚きでした。なぜなら、ぼくにとっての旅は、健康を保ち続けるための最良、最高の手段だったからです。
人はいったいいつから旅をするようになったのでしょう。人類以外の動物は旅をするのでしょうか。考えてみれば不思議な話ですね。仕事で旅をする人を除けば、人は旅をしなくても、生命は維持されますね。つまりは生きていくためだけを考えれば、旅などする必要はありません。にもかかわらず、一生のうちで一度も旅をしない人など、きっと居ないだろうと思います。
人はなぜ旅をするのか。その疑問を解くカギは、健康という言葉にあると確信しています。生命を維持するためではなく、健康を維持するために、人は旅をする。そう考えれば納得がいくのです。
健康とはなにか?
そもそも、健康とはどういう意味でしょう。
今回のコロナ禍でもなにかと注目された『世界保健機構』すなわちWHOという組織は、次のように定義しています。
「健康とは、ただ疾病や障がいがないだけでなく、肉体的、精神的、ならびに社会的に完全に快適な状態であること」
これをお読みいただければ、旅が健康を維持するためにひと役もふた役も買っていることが、よくお分かりになると思います。
旅がなぜ健康維持に役立つか。WHOの定義に沿って、ひとつずつ検証してみましょう。
「ただ疾病や障がいがない」とありますが、まずはここから。
これは今回のコロナ禍で明らかになりましたね。コロナに感染する疾病があれば旅はしないほうがいいのです。しかしながら、障がいがあっても旅はできますね。近年はバリアフリーという考えが浸透して来ましたから、障がいがあっても旅は身近な存在となったのは、とてもいいことですね。
次の「肉体的」は大いに旅とつながります。旅をしていると、知らず知らずのうちによく歩くことに気付きます。ぼくはスマートフォンに歩数計のアプリを入れているのですが、日常生活と比べると、旅をしているときのほうが圧倒的に歩数が増えています。
もちろん足が不自由だったり、歩くのが苦手な方は無理は禁物です。真結ツァーでは〈歩かナイス〉という歩行距離を短くしたツァーもありますからありがたいですね。
いずれにせよ、日常に比べて、旅をしているあいだは、自然と身体を動かしますから、肉体的に健康を増進させるにには、うってつけだと思っています。
【写真は神姫バス真結ツアーの歩く行程が少ない歩かナイスツアー。企画者が入念に下見を行い、ツアーに工夫を持たせている】
健康増進の旅
そんなわけもあって、旅先でぼくがお奨めしているのは朝の散歩です。
朝食の前かあと、どちらでもかまいません。出立までの時間を利用して、宿の周囲を散歩してみましょう。多くの宿は自然豊かな場所に建っていますから、宿の周りには恰好の散歩道があるはずです。前夜、宿の方に聞いておいて、できれば地図ももらっておきましょう。知らない土地を散歩するのも、旅ならではの愉しみなのです。
最近ではホテルのアクティビティとして、朝ヨガを取り入れているところもあります。旅を切っ掛けにして、ヨガを始めたという方も少なくありません。旅先では積極的に、いろんなことにチャレンジするのが、健康につながるのです。
次の「精神的」はまさに、旅が健康維持に役立つ一番のポイントです。
たとえばバスツァーで旅をするとしましょうか。集合場所からバスに乗りこむ瞬間、心が浮き立ちます。この時点で既に日常のストレスから解放されるのです。
バスが動き出せば、大きな窓の外の景色が次々と変わっていき、見たことのない風景に目を奪われ、ますますストレスは遠のいていきます。
そうです。しばし日常から離れ、雑事を忘れることが旅の最大の効用なのです。
その典型が温泉に浸かる瞬間ではないでしょうか。
温泉宿に着けば、まずは温泉ですね。部屋付きのプライベートなお風呂も、広い大浴場も、どちらも捨てがたい魅力がありますね。
掛かり湯をして、湯船に身体を沈めると、たいていの人は、う~、とか、あ~、とか、うなり声を上げますね。あれは、身も心も芯から解放されたという徴なのです。つまりは、肉体的にも精神的にも、健康という二文字を実感しているのです。
こうして、旅は肉体と精神の両面で健康を増進させてくれるのです。その最たるものが食であることは言うまでもありません。
旅の大きな目的のひとつである食は、その多くが地産地消を謳い、その地ならではの食材や調理法で料理を作っています。身体にいい食べものは必ず美味しいものです。そして美味しいものを食べると、必ず気持ちが豊かになります。上げ膳据え膳というのも気持ちをうんと楽にしてくれます。
眺めによる開放感、散歩に代表される運動、そして温泉。さらには食、と、旅は最良の健康サプリであることは間違いありません。
視覚からも健康に
日本には美しい四季があり、訪れる時期や時間、あるいは天候によってその表情を変えます。旅先での景色、風情などで脳に刺激を与え、視覚や体験から健康になることも旅ならではですね。自分なりの景色を探して、旅はやはりいいものですね。