失敗しない宿選びのコツ(旅に出かけるまであと一息)
宿選びのコツ
6月に入り、ようやく緊急事態宣言も解除されました。まだまだ油断はできませんが、少しずつ日常を取り戻せるようになってきましたね。
このコラムでもこれまでバーチャル、妄想で旅を愉しんできましたが、ここからは一歩ずつリアル旅に近づけていきたいと思っております。
リアルな旅をするにあたって、事前に情報を集めるのはだいじなことですが、その情報の取捨選択、使いかたを誤まると、まったくの無駄になるばかりか、邪魔な情報にすらなってしまいます。
事前に得た情報の見分け方、役立てる方法をお話しましょう。言ってみれば、事前情報の取扱説明書。通称トリセツです。まずは宿情報からはじめます。
いい宿とは
これまでにご紹介してきましたように、旅のたいせつな要素として、宿の存在があります。
日帰りではなく、宿泊を伴う旅の成否を決めるのは宿だと言い切ってもいいでしょう。なぜなら旅の大半の時間を宿で過ごすからです。更には命をひと晩あずけるわけですから、安心安全な宿でなければなりません。
それほどに、旅の構成要素として、宿は大きなウェイトを占めます。つまりは、いい宿を選ぶことが旅を成功に導く最大の勘所なのです。
では、いい宿とは何でしょう。何をもってしていい宿と呼ぶのでしょうか。それはしかし、人によって大きく異なります。好みの違いもあるでしょうし、宿との相性というものもあります。
どれほど名宿と呼ばれる宿であっても、好みに合わなければ、なんの価値もありません。テレビや雑誌で絶賛されている宿であっても、万人に向くとは限らないのです。
となれば、自分の好みに合う宿を捜すしかないのですが、かと言って日本中の宿に片っ端から泊まってみることなど出来るわけがありませんね。
(写真は修善寺温泉の名宿あさば旅館にある能舞台の眺め)
テレビ番組での宿選びとは
ガイドブックや旅の雑誌、テレビの旅番組などの情報は溢れるほどあります。なかでもテレビは昨今の事情で新たに撮影製作ができないこともあり、過去に放送した旅番組を総集編、ベスト版などと称して、連日のように再放送しています。これらの旅番組を今後のリアル旅にどう役立てるかですね。
さて、ここで大きなポイントになるのが妄想力です。これまでにご紹介してきた妄想旅だけに限りません。女性誌の宿特集やテレビの旅番組などで紹介されている宿を、漫然と眺めるのではなく、自分が旅をしているつもりになって、つぶさに見るのです。
テレビの旅番組を例に取ってみましょう。
まずは旅人が玄関をくぐるシーンから始まりますね。当然のように宿の方が出迎えられます。このときに女将さんやご主人、タレントさんを観ずに、周りに視線を移しましょう。撮影ですから、まさか散らかっていることはないでしょうが、活けてある花が季節外れだったり、額が歪んでいたら、ちょっと要注意ですね。花や額の絵などの趣味が自分に合うかどうかも、ここでチェックできます。
(写真は打つ水、玄関の手入れが素晴らしい山代きっての老舗旅館、あらや滔々庵)
部屋選びのポイント
次に部屋へ案内されますね。基本的に取材のときは最上級の部屋を撮影しますから、広さや豪華さに見とれていてはいけません。温泉旅館だったら、きっと露天風呂が部屋に付いているタイプを撮影しているはずです。ここで大事なのは、お風呂そのものではなく、お風呂に入った時の眺めです。自分が浸かっているつもりで見てみましょう。
手足は存分に伸ばせるかどうか、もだいじなチェックポイントです。もしくは肩までどっぷり浸かれるか。
今はそれほどではありませんが、部屋付き露天風呂が一大ブームとなり、日本中の宿が競って部屋に露天風呂を造りました。
最初から設計したのではなく俄か造りの宿の場合は、狭いベランダに形だけの露天風呂を設営した宿も少なくありません。そんな露天風呂だと温泉を引いていないことも少なくありません。必ずテロップで注意書きが出ますから、そのあたりもよく見極めましょう。
(写真は唐津の名旅館洋々閣。陰翳の素晴らしい整えられた宿)
部屋選びのポイント
お風呂チェックへが済んだら、今度は部屋のなか全体のレポートにも注目してみましょう。
見逃しがちなのは、部屋からの眺めです。景色がいい部屋なら、必ずといっていいほど、レポーターさんが窓際まで行って、外の景色を写しだしますが、そのシーンがなければ、きっと眺めはよくないのでしょう。
時にはこうして、裏読みすることもだいじなのです。雑誌の記事でもおなじですが、番組を作る側は、できるだけいいところを写し出そうとします。映える場面を強調するのですね。その裏を読めば、写さないところは、映えないということになります。
少し意地悪な目で見ると、本当の姿がよく見えてきますが、その最たるものが広さです。レポーターさんが客室に入るシーンは、たいていカメラは後ろから追いかけて撮ります。そして部屋の角から全体を写し出すはずです。こうすると広く見えるからです。僕もテレビ番組を監修して来ましたからよく分かるのですが、テレビというものはたいていが大きく見えます。人物もそうです。実際にお会いすると思ってたより小柄だったりします。カメラのマジックなのでしょうかね。
和室だったら畳の数を数えてみましょう。それが一番正確です。洋室だったらベッドの大きさと比較してみるのも一法です。何かしらの尺度を持つと、錯覚に陥らずに済みます。
(写真はあらや滔々庵の客室にある露天風呂。景色との調和が見事)
さて、旅番組のハイライトとも言えるのが食事シーンですね。どんな料理が出てくるか。レポーターさんの腕の見せどころでもあります。その食がホンモノかどうか。その見分け方は次回にお話しましょう。(第5回目へつづく)