ツアー特集 白い季節に浮かぶ幻想
冬の晴れ間に~たずねたい宿~
白い季節に浮かぶ幻想
今年は出かけることを自粛する年初でしたが、新しい生活様式で旅を愉しむ機会も徐々に増えてきました。秋から冬の気配が進む今日この頃。日本には古来より美しい四季があり、冬の到来とともにその「風物詩」を訪ねる旅がしたくなるのが人間の性(さが)かもしれませんね。今回は宿にゆっくり、あるいは連泊したり雪景色を楽しんだりと、「幻想」をテーマに特集を組みました。新しい生活様式での「冬旅」。さぁ、幻想の世界を求め旅におでかけしましょう。
大谷山荘・別邸音信(おとずれ)
宿の全室露天風呂付客室でわずか18室。タイプ別に部屋の違いを愉しむ事ができ、館内で過ごす温泉宿としては数多ある温泉宿の中でも間違いなく最高ランクである。
そんな音信(おとずれ)があるのは長州・山口県の長門湯本温泉。「大谷山荘」といえば旅行ファンならご存じの方が多いかもしれない。安倍元首相とプーチン大統領の会談の舞台がまさにこの大谷山荘である。大谷山荘は大型旅館でありながらそのサービスのきめ細やかさ、クオリティの高さを保ち、宿に勤める方が日本全国から見学にくる宿として業界でも一目置く存在である。なかでも館内のショップ(売店)の品ぞろえが素晴らしく、他の温泉宿と大きく違う。萩の著名な作家から新進気鋭な若手作家まで、陶芸・茶の湯を嗜む代表の大谷さんならではのこだわりが至る所にちりばめられている。
ショップに限らず、広くて楽しすぎる大浴場、ロビーでの夜の演出など大型旅館の極みだが、この大型旅館のノウハウをわずか18室の別邸に持ち込み、更なる磨きをかけた。それが大谷山荘の別邸音信(おとずれ)だ。宿の名はすぐそばを流れる音信川に由来していて、河畔の宿である。音信と書いて「おとずれ」と読む。これこそが日本語の美しさだ。観光地でいうなら秋吉台や秋芳洞、さらには金子みすゞ生誕の地として知られる仙崎が近い。だが、この別邸音信を訪れる大半はこの宿に泊まる事を主目的としてほとんどの時間を宿で過ごすという。すべての客室に露天風呂が備わり、木々を眺めながらのバスタイムを、ゆったりと愉しめる。もちろん大浴場も完備されている。十分な広さを持つ部屋は洗練されたインテリアに彩られている。室内の冷蔵庫はすべて宿泊料金に含まれており、冷蔵庫の中のデザートなど随所に「もてなし」の心を感じる。ロビーには「おとずれ文庫」と言われる書籍やDVD、音楽などがずらりと並べられており、ここからお気に入りの品を選び、部屋でゆっくり過ごすという滞在する時間を飽きさせない工夫である。そして極めつけはなんといっても料理長武田氏の繰り出す熟達の料理だ。ここ長門湯本は仙崎にも近く、海のもの・山のものと食材は充実している。お米は萩の佐々並九郎米、こちらは生産がわずか数百俵であり人気のお米だ。
部屋、温泉、食、全てに満足できる湯治のモダニズム温泉リゾートである。