ストレスフリー、だから健康、だから美味しい。「しそう森林のサーモン」
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森林に囲まれた播磨の山里でサーモン養殖
「森林以外、何もないところや」。『しそう森林(もり)のサーモン』を養殖する一般社団法人遊ファームの代表、平野岩夫さんは開口一番、そう口にした。
サーモンの養殖池があるのは、兵庫県宍粟(しそう)市の上ノ(かみの)地区。面積の9割を森林が占め、森林王国と呼ばれる宍粟市のなかでも最も山奥で、揖保川の支流、伊沢川の最上流エリアになる。集落のすぐそばまで木々が迫り、吹く風さえも緑色に感じられるほど自然豊か。森林がもたらす、澄んだ水と空気が唯一の自慢だという。始まりは地元を元気にしたい!との想いから
『しそう森林のサーモン』の養殖がスタートしたのは2016年。平野さんが住む上ノ地区ではかつて森林の伐採や炭焼きなどに携わっていた人もいたらしいが、今ではほとんどの人が会社勤めで生計を立てている。平野さんもサラリーマン人生を送り、定年退職後は時間をもて余すようになる。「毎日暇で、暇でかなわん」。周りをみても、元気なリタイア組が何をするでもなく暮らしていた。
遊休地や耕作放棄地、元気なシニア世代という地域の力を活かすことができないだろうか。そう考えて住民らと一般社団法人「遊ファーム」を設立。ドクダミなどの薬草栽培や釣り堀事業を手掛けたのち、サーモンの養殖にもトライする。山里の過疎高齢化にストップをかけるべく、清流の恵みを生かして、新たな雇用と産業活動ができないかと考えたのだ。限界集落化しつつある上ノ地区。サーモンの養殖を産業として根付かせ、少しでも地域の活性化に寄与したいと考えた。
宍粟ではアマゴの養殖業を手掛けてきた。アマゴもサーモンも同じシャケの一種なのだから育てる環境も揃っているはず。岩手県の業者からニジマスを改良した「ドナルドソン」の稚魚1万2000匹を購入し、養殖を開始した。成長力が高く、味が良いと業者お墨付きの品種だ。ただ成魚に育つまで、ふ化から3年かかる。そのため当初は成魚になる前の段階で、須磨や赤穂、坊勢島の海で養殖する事業者などへ稚魚を供給していた。
せっかく育てるのならば、宍粟ならではの「ご当地サーモン化」をめざしたい。事業として成果をあげ、存続していくためにも、宍粟で成魚まで育てて卵を採り、ふ化させて育てた純県産サーモンとして売り出そうと決意。2018年には伊沢川の清流を引き込んだ養殖池も新たに増設した。大敵はストレス。のびのび環境を整える
清流をかけ流しで、常にフレッシュな水で満たされた自然に近い状態の養殖池に、のびのびと泳ぎ回れるようサーモンの数を限定して放ち、低密度でストレスのない環境を整えた。
「魚の大敵はストレスや。人間もストレス発散のために、田舎へ旅行に出かけるやろ。なんもない宍粟は都心に比べ、癒しの要素が大きいんとちゃうかな」。
宍粟の森は、2015年兵庫県初のセラピーロードとして認定されるなど、心と身体を癒す効果が科学的に認められている。森に囲まれた癒しの養魚場のキレイな水で、じっくり3年かけて“元気に育てること”を目標に設定した。(写真/平野さんが餌を池に投げ込むと、バタバタと食らいつく元気なサーモン。「大きくしたいと大量に餌をやるのではなく、様子を見ながら、時に休ませてあげることも大事」)
海水ではなく、“淡水”で育てるメリット
サーモンは水温の高い水を嫌う。海で養殖する海面養殖では5月半ばには海水がサーモンを養殖できる適水温を超えてしまうため、それまでに水揚げしてしまわなければならない。つまり出荷時期が限られるということだ。一方、上ノ地区は標高約400mの山間ゆえ、年間を通じて水温が高くなることはなく、安定して養殖ができる。淡水のみで育てるから赤潮や海特有の病気、寄生虫(アニサキス)の心配もない。
『しそう森林のサーモン』は四季を問わず、年中無休。1 年を通していつでも新鮮なサーモンを出荷できることが強みとなっている。
「兵庫県産・生サーモンならではの鮮度感が売り」と平野さんは胸を張る。冷凍ではなく冷蔵で出荷し、関西圏ならば、注文した翌日のお届けも可能。一度も冷凍されていない生サーモンならではの抜群の鮮度感を楽しんでもらうため、活〆脱血処理という処理法を採用している。
「水揚げ直後に活〆するから、味が変わらないし、傷みにくい。だんだんに死ぬのは魚の味には一番、あかんのや」。
エラと尾部の動脈を切って血抜きし、内臓をすべてとる。背ワタに血が残っているのもきれいに取り除く。それを一匹一匹、手作業で行っている。大変なこの作業にこだわるのは鮮度が長持ちし、食感や色合いがよく、生食でも生臭くない生のサーモンを提供できるからだ。食べ続けてほしいから、てらわない味を
一般的なサーモンと比べ、『しそう森林のサーモン』は控えめな脂のりで、さっぱりとした食味。人工的に脂質を高めたり、餌による風味づけしたりすることなく、本来の身質を重視。生食で食べるとサーモンの旨味が口いっぱいに広がる。
「美味しいか、美味しくないかは、お客さんに決めてもらうこと」と言い切る平野さんだが、小さな子どもからお年寄りまで安心して美味しく食べることができるとリピート買いする人は多い。その評判は飲食業界にも広がり、高級和食店の刺身や丼、人気イタリアンのカルパッチョやマリネの素材として広く使われる。「しそう森林のサーモンを食べたら、他のサーモンは食べられない」というファンが着実に増えてきている。いつ、やめようか。実はそればかり考えていた
養殖をスタートして6年、事業は少しずつ軌道に乗り始めたものの、昨秋まではずっと苦労の連続だった。何度、やめようと思ったのか、数知れないと平野さんは振り返る。
2018年の夏には西日本豪雨の影響で養殖池の取水口に石が堆積。清流を引き込めず、多くの稚魚を失ってしまった。なんとか生き延びた稚魚に望みを託して育て、再び出荷をめざすものの、今度は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、注文が全てパぁになってしまう。2020年3月、地道に営業をして、ようやく大手ホテルからもらっていた取引が白紙に。そして未だコロナ禍は収まる気配がない。
やめるのは簡単、でも池には元気なサーモン達が生きている。色々な人の協力を得てここまでやってきた。何よりうちのサーモンを楽しみにしてくれているお客さんがいる…、ここでやめるわけにはいかないのだ。とにかく弊害になる部分を一つずつ潰していくしかない。どんな厳しい状況でも飯が食えるようにしたい、と平野さんは前向きに考えている。
サーモンを単に大きくすることではなく、健康に育てたい。その想いをもって、餌の改良にも取り組む。
「お客さんに少しでも価値があるものを提供したい。」あくまで目標は元気なサーモンを育てること、ブレがない。
今後も「横着をせず、生涯現役でいたいわな」と笑う平野さんは御年72歳ながら病気知らずで、健康そのもの。ちなみにサーモンには良質のビタミン類やカルシウム、DHAやEPA を豊富に含み、健康のためにサーモンを丸ごと買って栄養補給する人もいるとか。いろいろな人のココロとカラダの健康に『しそう森林サーモン』が役立っている。今日も元気に!平野さんの挑戦は続いている。
(文/安田祥子)
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